会社についてネットで悪く書かれていることに悩んでいる社長さんがいらっしゃいました

この前、個人的な知り合いの社長さんから、こんな話を聞きました。

 

「以前、採用面接をした者がネットで面接の様子を悪く書いていて困っている」というものでした。

 

内容的には、完全に嘘と呼べるものはなさそうなのですが、悪口を書き込んだ人の主観がたっぷりと入ったものになってて、面接の内容だけでなく、会社自体の欠点(本社が駅から遠いとか、壁が汚いとか・・・)も挙げ連ねているという状態でした。

 

こういった場合に、どのような対応が可能なのでしょう?

そもそも、何らかの罪が成立するのでしょうか?

「本当のことを言っているのだから、罪になるはずが無い」

と考えるのが普通でしょうね。

 

でも、そうではないのです。

一般社会の普通と法律の世界の普通が異なる場面といえるでしょう。

とはいえ、よく法律の考え方を見てみると、納得できるものだと思います。

 

では、法律の世界ではどうなるのでしょう?

 

今回の社長さんの事例は、場合によっては、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

 

ここからちょっと難しい話になります。

 

【名誉毀損とは】

 名誉毀損というのは、一言で言えば、他人の社会的評価を低下させる行為です。

 名誉は人格権として法的に保護されていて、名誉を毀損する行為は、民事上は不法行為として損害賠償等の対象となり、刑事上は名誉毀損罪(刑法230条1項)等に問われます。

 

 「名誉」は、講学上は内部的名誉、外部的名誉、名誉感情の3つに分類されます。

 

内部的名誉:自己や他人が自信に対して下す評価から離れて、客観的にその人の内部に備わっている価値そのもの。

外部的名誉:人に対して社会が与える評価。

名誉感情(主観的名誉):自分が自分の価値について有している意識や感情。

 

 このうち、名誉毀損で保護される「名誉」は、外部的名誉を指します。本人が侮辱されたと感じた(=名誉感情が害された)からといって名誉毀損となるわけではなく、あくまでも「社会が与える評価」が毀損されたかどうかが問題なのです。

 例えば、ある人に対して、直接、罵倒する言葉を浴びせたとしても、それを聞いた人が他にいなければ、その人の名誉感情は害されても、社会的評価は低下しないので、名誉毀損とはならないのです。

 

 ただし、名誉感情を侵害する行為も、それが甚だしい場合は損害賠償の対象になることもあります。また、発言等で摘示された事実が、たとえ真実であろうと、名誉毀損が成立するのが原則です。「本当のことを言っただけだ」というだけでは、弁解にならないのです。

 

 とはいえ、それでは本来有益かつ必要な情報も流通しなくなってしまい(例えば、政治家などの重要な人物の不祥事ですら報道できなくなってしまいます)、表現の自由が害されて極めて不都合です。そこで、一定の要件を満たす場合には人の社会的評価を低下させる行為であっても、民事上も刑事上も名誉毀損の責任を問われないことになっています。

 

【名誉毀損の判断基準】

 「人の社会的評価を低下させる」と言っても、ある記事、発言等が人の社会的評価を低下させるものかどうかは、受け止める人によっても異なってくるケースは多々あります。明確な害意を持っているような場合意はともかく、記事を書いた人や発言者本人は、名誉毀損に該当するような内容ではないと思っているケースも少なくないでしょう。

 

 そこで、どのような基準でこれを判断するかという問題が出てくるのですが、新聞や雑誌などであれば「一般読者の普通の注意と読み方」を、テレビなどであれば「一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方」を基準に判断するというのが、おおむね確立された判例となっています。これでも曖昧さは残りますが、これ以上に具体的な基準を一般的に定立することはなかなか難しいでしょう。

 

 

どうでしょう?難しかったですか?

【まとめ】

本当のことを書いても、名誉毀損罪になることがあるので、書くほうは気を付け、書かれたほうはそれなりの対処ができる!ということです!